アイデンティティ・クライシス
こんにちは、コバヤシです。
今日は金曜日じゃないけど、書きたいことができたので書きます。
最初に軽く説明すると、これは、現在就活を控えた大学3年生であり、マンガばかり読んでいた僕が、このツイートを発端にアイデンティティの危機に陥り、己の安いプライドのありかを思い出し、勝手に救われた話です。
※この記事にはアル、ひいてはその運営に対しての感謝の記事であり、批判や批難の意図は一切ございません。また、僕の内心をかなり綴っていますので、人によっては嫌悪感を催す可能性がございます。申し訳ありませんが、あらかじめご了承ください。※
アルというのはマンガ好きのためのSNSで、実際にアルが出版社に許可を取り、許可が下りたマンガのコマを投稿することで好きなマンガを他人に推すことができる素晴らしいサービスです。
現在も頻繁にアップデートが繰り返されており、進行形でどんどんユーザーの意見も取り入れ進化していっている本当にいいサービスだと思っています。
僕がこのサービスを知ったのは確か1月とか2月のことで、このアルを作った”けんすう”さんの講演を聞いたのがきっかけでした。けんすうさんは本当にマンガ愛が溢れていて、マンガが大好きだった僕はすぐに虜になって即会員登録をしました。
しました・・・・・・
したのはいいものの、当時の僕は、自分で公共の場に何かを表現をするということに謎の抵抗感というか気恥ずかしさを持っており、なんとなくアカウントを作ったまま、Twitterでけんすうさんやアルの公式アカウントが日々熱量を持って嬉しそうに自分たちのサービスが進化していく報告をしているのを眺めていました。
3年の夏になり、インターンに行ったほうがいいんじゃないかという焦りから大企業のインターンの面接を受けるも2次であえなく撃沈し、そのままダラダラと、
アルがインターンでもやったら面白いなぁとか思いながらヘラヘラして過ごしていました。
そんなある日とあるツイートが目に飛び込みます。
唯々当たり前のこと。
僕がヘラヘラしてる間に、やることやってる人がいただけ。
頭では理解してても、びっくりしたし、明確に世代に乗り遅れたと感じ、震えました。恐怖で。
それでも未だ僕の腰は重く、自分なりに頑張ってるとか言い聞かせながら、もっと最適解があるはずなのに、ここで記事を書いたりしてるしと自分を慰めていました。
そして月曜日、件のインターン追加募集のツイートを目にし、
応募しなければ!!
とリンクを開き、応募フォームの質問に目を通すと、こんな質問が目に入りました。
あなたは、月に何冊マンガを読みますか?
何冊だろうか?
頭の中でなんとなく数えてみて、読み返した分も含めたら20冊くらいかな?なんて思って、その時一緒にいた友達に、事情を説明して、20冊ってどうなんだろう?と聞いてみたら
いや、だいたい100冊くらいじゃない?俺たぶんそんぐらい読んでるわ
と返ってきました。
マンガには一家言あると思っていた僕の安いプライドはもうコナゴナでした。
↑『エアマスター』屈指の名言。カッコよすぎる。
毎週土日には各地のブックオフに自転車で通い、なんとか安くマンガを買ってきて読み漁り、
迷惑だとは思いながらも、近所のコンビニでジャンプ・サンデー・マガジン・チャンピオン・ヤンジャン・ヤンマが・モーニングを毎週立ち読みし倒していた高校生の頃に比べ、
大学生になり、映画をはじめ様々なカルチャーに手を出し、昔ほど情熱もリソースも割けていなかったこと、そしてそれがいつも心の片隅でモヤモヤしつつも直視するのを避けていたことが否応なしに思い起こされました。
そこから芋づる式に、
以前から自分の趣向に偏りがあり、
少年漫画や、『ベルセルク』や『ヘルシング』みたいなタイプの青年漫画は好んで読むけど、『ソラニン』や『3月のライオン』、『ちはやふる』みたいなタイプはあまり読んでいないと。
ハードコア気取ってウェブマンガにあまり触れてこなかったこと。
マンガ好きであることを自負するのであれば、もっと幅広いジャンルを横断的に読み、知見を蓄えるべきだと感じていたことも思い起こされ、帰りの電車で虚ろになっていました。
そんな感じでフラフラになりながらもなんとか家に帰り、風呂に入ってたら、
更に昔のことが思い出されてきました。
明確に変化が起きたのは2018年2月
映画「グレイテスト・ショーマン」が公開された頃でした。
それまではアングラなオタク趣味を懐に忍ばせ、教室の隅で友達とコソコソしているだけだった僕は、大学に入り映画を見はじめ、「グレイテスト・ショーマン」が公開した時もすぐに見に行きました。
この作品は公開してすぐに話題になり、”公共の場で”、”何の心配もなく”いいよねと言うことができました。
それによって僕は、初めて世界に肯定されたように感じたのを覚えています。
それ以来、僕は誰の目を気にすることもなく楽しめるという感覚に酔いしれ、どっぷりとハマっていき、ある部分では、オタクカルチャーを蔑視するようになってしまいました。
風呂場でその変化に気づいたときは愕然としました。
親に何を言われても
自分が好きならばそれでいいと自分の世界を確立していた、
塾の講師に「大人になったらそういった子供向けのものは読まなくなる」と言われても絶対に一生マンガを愛し続けてやると誓った、
『キン肉マン』のキン肉マン対ネメシス戦に興奮しすぎて夜中に友達に長文でいかに『キン肉マン』が素晴らしいかを送り付けた、
『進め!聖学電脳研究部』のこのページに本気で救われた、
高校生の頃のギラついて尖っていた、
誰かとマンガについて語るのが大好きで、友達に好きなマンガを勧めまくっていた
あのキモオタのコバヤシが、
今自分が最も嫌っていたものになりかけてしまっていたことに。
いつの間にか自分が定量化された数字でしか好きを計ることができなくなっていたことに。
こんな時こそとマンガみたいに
クソオォォォ!!!とかわめこうと思っても
ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛
とかいう亡者みたいな声しか出ないし、
大粒の涙をボロボロこぼそうと思ったけど
軽く涙ぐんだだけで全然涙は出ませんでした。
あの頃の自分は狂ってたのに、今の自分は何かよくわからないものを伺って丸くなっているのがショックで、きっとインターンに応募してくるのは、そして採用されるのはまだ尖り続けている人たちで、そうではない自分が無力で悔しくて、自分のアイデンティティが、すべてだと思っていたものが揺らいでるのにちょっと余裕があるのに腹が立って、今の自分は確実には確実に白浜兼一や伊藤真司や加藤鳴海やキン肉マンがいたから確立できて、こんなnoteまで書いたのに、
いつか自分が何かの表彰台に立ったら素晴らしいキャラクターを生み出してくれた先生方にお礼を言おうと思っていたのに恩知らずに成り下がってしまっていた自分が情けなくて、もうぐっちゃぐちゃになっていました。
そんなことはつゆ知らず、
いつまで風呂入ってんの!ごはん冷めちゃうよ!
なんて声を掛けてくる親に普通に
わかった
とか返事をしているのもなんだかショックで。
着替えて一度自分の部屋に戻ると、少し前までは床にマンガが積み上げられていたのに、今は部屋の隅に整頓されてぴっちり並んでて、自分がそこにマンガたちを追いやってしまったのがしんどくて、でも涙は出なくて、
ヴヴヴヴみたいな声を出しながらベッドから動けなくなっていました。
とはいえ、いつまでもそんな状態ではいられず、差し当たっては夕飯を食べないといけないのでのっそりと起き上がると、そこには改めて写真撮ってみたら全然ぴっちりと整頓されてなかった本棚がありました。
本棚の各所に目をやり、その作品たちを読んだ思い出に思いを馳せていると、
とあるものを思い出しました。
それがコレ
今年の夏に僕が編集長を務める大学のサークルで製作した雑誌の自分の企画です。
この企画で紹介したのは、僕が今読んでいて、本当に面白くて売れてほしいけど、まだそこまではね切っていないマンガたちでした。(そのうち何作かは、アニメ化が決定しており、発表を見たときは小躍りしました。)
これを見返していたら、
こんな自己満足極まりない企画を平然とやっちゃえるくらい、自分はやっぱりマンガが好きだということ、
新刊発売日に部室で『ランウェイで笑って』を読んで号泣し他の部員にドン引きされるくらい、自分がまだ狂っていられていること、
そして何より、ひと月くらい前に普通に『スナックバス江』の紹介記事を書いていたことを思い出すことができました。
どうしようもなくマンガが好きだというアイデンティティを思い出せたことで、夕飯を美味しくモリモリと食べ、気持ちよく眠ることができたし、これからは前向きにいろんなマンガを読んでやすいプライドを磨いていきたいと思います。
そして、受かるかわからないけれど、アルのインターンにも申し込んでみたいと思います。
最後となりますが、”アル”という素晴らしい取り組みによって、人知れず一人の大学生が勝手に救われたという事、そしてそのことに対する僕の感謝が、書類選考で普通に落ちたら伝えることができないなぁと思い、もし選考の過程で、運営の方々がこの記事を読んでくれたら嬉しいなという願いを込めてこの記事を書きました。
ここまで読んでくださったみなさん
そして”アル”という素晴らしい取り組みを作り出してくれたけんすうさん
並びに運営をされている皆さま
本当にありがとうございました
それでは、また次の記事でお会いしましょう
(かいたヒト:コバヤシ)